親鸞会の真実

なにが息子を変えたのか

5.高森顕徹氏の講演会

息子が富山での講演会に行くという。件のサークルの行事らしい。
高森顕徹という先生の話を聞きに行くのだそうだ。またか。最近合宿に行ったばかりではないか。

そうだきっとこんな感じで、徐々に宗教にのめり込んでいくのだ。大体どうして話を聞きに富山まで行かなければならないのだ。遠すぎるではないか。

私は思いっきり反対したが、最近家の掃除なんかを手伝っているだけあって、家内が「いいじゃないの」と言ってきた。

「どんな先生から何の話があるのか知らないけど、掃除とか皿洗いとか一生懸命やるようになったんでしょ。悪いこと言ってるんじゃないことは確かじゃないの。」

「世間知らずだ。宗教の恐ろしさをしらんのだ。掃除の勧めくらいどこの宗教でも言っているよ。そういったことに騙されて内面の恐ろしさを隠しているんだ。」

「じゃあ、アナタは宗教の恐ろしさを知ってるって言うの?、あの子がオウムでもやっているって言うの?、合宿だって散々心配したけど別に何も問題なかったじゃない。」

「でもどんどんエスカレートして家に帰ってこなくなったらどうするんだよ。」

家内も少し心配になったらしい。そこで夫婦で話し合った結果、どんなサークルでいかなる話を聞いているのか、実際に参加してみよう、という話しになった。勿論私は仕事があるので、家内に東京まで行ってきてもらう。

息子に話しをしたところ、高森顕徹氏の講演会の翌々日に大学内で講演会があるから、それに参加して欲しいとのこと。それじゃあ講演会にはとりあえず行ってもよし。その後サークルの講演会に家内を派遣する。

富山での高森顕徹氏の講演会が終わり、息子は無事に帰ってきた。土産付き(鱒寿司)。少々興奮気味だ。若者は熱しやすく冷めやすい。早く冷めてくれると良いのだが。

高卒で大学生活を経験していない家内は大学のキャンパスで講義を聴けると言うことでかなり嬉しそうだった。遊びに行くのではないのに。

4.いずれお父さんにも話すよ、でもちょっと待って

ゴールデンウィークになり、息子は合宿にいった。約束通り毎日電話があった。合宿ではうまいものを沢山食べて、ぐっすり寝ているとのこと。遠距離通学で食事や睡眠の時間が不規則になっている息子にとっては、有り難い機会だったようだ。

また、講義ではとても大事なことを教えてもらっている、とのことだった。親鸞と仏教のことについて色々話を聞いてきたようだ。

「いずれお父さんにも話すよ。でも今は自分でもよくわかってないところがあるからちょっと待って。」

結局どんな話しがあったのかはまるでわからないが、洗脳されている訳ではないようだ。もっとも洗脳とはどういうものかもわからないのだが。

実は息子が合宿にいっている間に、あまりに心配で会社の友人にそのことを相談したのだが、友人の答えは、

「絶対にそんなところに行かせるもんじゃない。大体カルト宗教というのは最初は正体を明かさないんだ。あとから豹変する事はいくらでもある。親に電話したときはこう言えと指導しているのかも知れない。」

というものだった。その通りだろう。

実はこの友人、娘さんが「エホバの証人(ものみの塔・良く奥さんが子連れで小冊子を持って勧誘している)」に入信し、脱会までに大変な苦労を経験している。

エホバの研修に行ったときからおかしくなり始め、学校の事務局、弁護士、近くの教会の神父、娘の友達を総動員して、脱会にこぎ着けたそうだ。一年くらいはほとんど引きこもりに近い生活だったという。

そしてエホバも、やはり最初は楽しそうな「聖書を研究するサークル」で、特に違和感も何も感じなかったという。

この話を聞いたときは相当心配し、合宿場所までその友人を連れて行こうかとも思ったが、ちょうどその時息子から電話が入り、その明るい声と辺りから聞こえる談笑があまりに楽しそうだったので、行く気もなくなってしまった。

そして、息子が合宿から帰ってきてから、変わったことがある。

朝家内が起こしに行かなくても、自分で起きてくるようになった。あいさつをするようになった。食事のあと自分で皿を洗うようになった。部屋の掃除をはじめた。帰りが遅くなるときは連絡が入るようになった・・・など。

なにが合宿であったのだろう。
息子に聞いてみると、待ってましたとばかりに、仏教の教えを実践しているのだ、と言う。

母はそれを聞いて喜んでいたが、私は複雑な気持ちであった。

両親の目を欺くために、教え込まれているだけではないのか。

何より、今まで自分が口を酸っぱくするほど行っても聞かなかったことを、たかが大学生のサークル合宿ごときに参加しただけでやるようになった。その何とも言えない悔しさもあって、私は素直に喜べなかった。

このままこんな感じで終わればいいのだけれども、そういうわけには行かないだろう。
かといって別に今何か問題があるわけでもないし。結局やはり、しばらく見ていることになる。

3.ゴールデンウィークの合宿

4月も終わりに近くなってきた。ゴールデンウィークはどうしようかと家族で話しをしていると、息子だけ自分はサークルの合宿に行きたいという。

花の大学一年生である。ゴールデンウィークになにも予定がないのも考え物だが、例の宗教のサークルである。何があるのか心配でならない。行って欲しくない思いで一杯だった。

「どこで合宿するんだ。寺か?」

「いや、普通の旅館だって。電話番号がこれで、住所は・・・」

バーベキューとかスポーツやるんだといくら言われてもどうしても納得できない。大体宗教の合宿なんて洗脳されるに決まっているじゃないか。

統一協会の洗脳合宿について聞いたことがある。これはほとんど睡眠をとらせず食事もわずかしか与えないで、7日間ぶっ通しで統一原理の話しをして、参加者を洗脳するらしい。オウム真理教だって富士山麓で合宿していた。

今までがどんなにソフト路線でも、ここらで本性を現すのではないか。そんな不安が襲った。幸い旅館の住所と電話番号は、息子からもらったパンフレットに書いてあったので、電話してみた。

答えてもらえるかどうか心配だったが、参加する学生の父親だというと案外あっさりと話しをしてくれた。

どんな団体か?
「大学で親鸞の教えを学ぶサークルだそうです。」

毎年やっているのか?
「毎年使ってもらっていますよ。」

どんな合宿なんですか?
「部屋で講義をしているのが半分くらいで、あとはバーベキューとか遊びに行っておられるみたいですね。」

そのあと、合宿に参加する学生は最近の若者にしてはとても礼儀正しく、お酒もやらないし、毎日元気で活発だということ。大変いい学生さんですよ、と。

単なるリップサービスとも思えない口調だったが、考えてみれば旅館を使ってくれる団体を悪く言うはずがない。大きな宗教団体なら、その旅館の主人が信者と言うこともあるだろう。

その後母と家内に相談したが、母は、どんなところに行くのかわからないが、御開山(母は熱心な真宗の門徒なので、親鸞のことを御開山という)のお話ならおかしなもののはずがない。行かせてやりなさい、と賛成の様子。家内は心配していたようだが、息子が行きたいのだから闇雲に反対するのもどうか、とのことだった。

聞けばその旅館は家からも遠くなく、いざとなれば車で行ける。私が心配しすぎなのかも知れない。

有名な観光地でもあるので、そんなに変なことも出来ないだろうし・・・。携帯の電源を常に入れておくこと。一日一度自宅に電話を入れること。この二つを言い聞かせて、息子を行かせることにした。

2.怪しい宗教とかじゃないだろうな?

無事に息子の入学式も終わって、授業が始まったらしい。私はいつもの通り会社に通っているが、ちょっと変わったことがあった。息子の帰宅が夜遅いのである。通学に時間がかかるのは知っているが、それにしても9時、10時くらいになる事もある。

週に2~3回そんな日があった。飲みにでも行っているのだろうかとも思ったが、それなら帰ってきたときにわかる。大学生としては特に変わったことではないのだろうが、変なところに顔を出しているようでは困るので、聞いてみた。

すると、例のサークルに行っているという。

「しかし大学で人生を考えるなんて、何やっているんだ。お前はそんなガラじゃなかったろう。どうせかわいい女の子が多いとか、そんな理由で続けてるんじゃないか?」

冗談半分で聞いてみるとその答えは意外だった。

「考えるって言っても、浄土真宗の親鸞の勉強をやっているんだよ。親鸞ってお父さんも知ってるでしょう?」

知らないわけがない。うちの宗旨は親鸞聖人、浄土真宗だ。
しかし何で大学でわざわざ親鸞哲学なんだ?

「お前、それ知ってて入ったのか?、そのサークルに。」

「説明会の時にそう言う話しがあったよ。親鸞の言葉が出てきて、これについて話しをするんだって。」

「しかし何で大学で親鸞なんだ。話しって、誰がするんだ。寺の坊さんでも呼ぶのか?」

「浄土真宗の講師を呼んだりすることもあるけど、大学の先輩が話しをすることも多いよ。今日は四年生の人だった。」

私は俄然心配になった。浄土真宗なら悪いことはないだろう。しかし本当にそうなのか?

今も昔も仏教系の新興宗教というのはある。有名なものではオウム真理教があるし、そんなものに息子がのめり込んでいるのではないか。

「怪しい宗教とかじゃないだろうな?」

「大丈夫だと先輩は言っていたよ。」

「当たり前だろう。うちは怪しい宗教ですって自分で言うところがあるか!」

「父兄参加大歓迎だって言ってた。心配ならお父さんも来てみたらどう?」

実際に参加している父兄はいるのかと聞いてみたら、よくいるという。ますます訳がわからなくなってきた。

本当は私も参加して確かめてみたいところだが、仕事の都合でどうしても5月以降にならないと日程が空きそうにない。妻に頼んでみたが、親鸞さんならそんなに心配することもないでしょうに、とのんきなことを言う。ずっと北関東の田舎育ちの妻は、人を疑うことを知らないのだ。

息子に、サークル活動があったときはどんな話しがあったのか、隠さず言うように厳命して、しばらく見守ることにした。

1.息子が大学のサークルに入る

息子が進学したのは都内の某私立大学だった。地元の国立大学へ進学して欲しいと再三言っていたが受かってしまっては仕方がない。自宅から宇都宮線や山手線を乗り継いで1時間半。ずいぶんな長距離通学になる。

入学式の日、息子は早速沢山のサークルの書類をもらってきた。どんなサークルに入るのかは大体決めた、人生の目的を学ぶのサークルをやりたいという。

「理工学部で人生か。堅い大学生活になりそうだな。もう少しくだけたサークルに入っても良いんじゃないか。就職したら本当に遊べなくなるんだぞ。学生のうちに少しくらい遊んでいてもいいんじゃないかな?」

「お父さん。理工学部だからこそ哲学が必要なんだよ。人はなぜ生きるのかっていうことだよ。学生時代くらいしか学べる場が無いじゃないか。そのサークルは真面目そうな先輩が多いし。遊び系のサークルなんて絶対に嫌だと思っていたから。」

うちの息子はそんなに真面目だったかな。
それにしても、人はなぜ生きるのか・・・そんな大きなテーマが学生の手に負えるのだろうか。しかし大体大学のサークルなんて親が口を出す類の問題じゃない。

それよりも、ちゃんと勉強について行くことが出来るだろうか。
理系というだけで大変なのに、留年だけはしないで欲しいものだ。